35歳からの中二病エンジニア

社寺・鉄道・アニメを愛でるウェブ技術者の呟き

鎌倉市に移住して半年経った

移住した直後に一度記事を書いたことがあったけれども、半年経って新居での生活が日常になってきた感が出てきたので、改めて所感を綴っていこうと思う。なお、移住直後に書いた記事は以下の通り。社寺や鉄道のように個人的な趣味に関する所感は改めて書くまでも無いので今回は触れないでおく。

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今までの引越遍歴

地域に対する好き嫌いというのは、それまでに住んできた地域によって変わってくるものだと思うので、参考までに今まで四捨五入で1年以上住んできた地域を挙げておく。

  • 三重県鈴鹿市某所(18年)
  • 滋賀県彦根市城町(4年)
  • 東京都三鷹市牟礼(1年)
  • 石川県能美市宮竹(1年)
  • 滋賀県大津市神領(3年)
  • 東京都中野区丸山(1年)
  • 東京都新宿区新宿(10年)

…と、大学卒業まで人口10万人台の地方都市、東京暮らしは漸く10年を超えたあたりという感じだ。そして東京暮らしには最後の最後まで馴染めなかったということを付け加えておく。あと念のため、僕の中では人口10万人台の地方都市は「田舎」と定義しているのであしからず。駅もイオンも無い田舎は、僕の中では「ド田舎(褒め言葉)」なので。

鎌倉市の地域差について

観光都市にはありがちなのだけれども、鎌倉市は地域によって別の市かと思うくらいに街の雰囲気が違うので、そこは念頭に置いておく必要がある。

例えば大船地域なんかは住むことに特化した東京・横浜の衛星都市となっているし、西部の深沢地域は工場や新興住宅地が立ち並ぶ典型的な郊外都市だ。その中でも僕の住んでいる腰越の沿岸地域は、江ノ電の中でも有名な併用軌道区間が商店街を兼ねていて、昭和レトロな沿線風景と同様に住宅街も年季が入っている。雰囲気としては貫禄のある城下町といったところだろうか。

「鎌倉市に移住した」と言うと、鎌倉市街や七里ガ浜、稲村ガ崎のような地域を想像されがちだけれども、こっちにはそういうキラキラ感はほぼ無いぞ(良い意味で)。

良かったこと

人が少ない

一番は何と言ってもコレ。東京だと何処へ行っても人!人!!人!!!で息が詰まる。近所のスーパーへ行くだけでも人と服が擦れ合うことがあるので、帰宅したら着替えるなり入浴していた。そういうストレスがゼロになったのは非常に良かった。

最寄りのスーパーは2軒あるのだけれども、どちらもレジは1~2人体制で、昼時や夕食時でも店内に人が2桁居ることの方が珍しい。まぁ、人が少ない分レジの店員さんにはすぐに顔を覚えられるという別の残念なことはあるけれども、愛想良くこんにちは~と挨拶さえしておけば無問題なので、人が多いよりは余程良い。

あと、市役所の支所での手続きで並んだことが無い。一度マイナポイントに便乗した申請ラッシュの時期に行ったことがあるのだけれども、相当な混雑が予想されると通知書にも書いてあったのに、蓋を開けてみたら誰もいなくて拍子抜けしてしまった。新宿区役所とか、1時間で退散できたらラッキーくらいに常時人で一杯なのに…。

とはいえ、何だかんだ言っても観光地なので時期によっては人が多いのでは?と思われるかもしれないが、腰越の中心部は幸か不幸かあまり観光目的で足を運ぶ人が多くないので、連休の昼間に電車通りを歩いていてもちょくちょくすれ違う程度だったりする。そこは商店街としてもう少し集客しても良いのでは…という気もするけれども、とはいえ変に観光地化されていない今の町並みが好きなので、そのままであってほしいとも思う複雑な心持ちだ。

騒音が少なくて空気が良い

東京に住んでいた頃は雑踏の音や淀んだ空気が嫌で、とても窓を開ける気になれなかった。今では窓を開けてやって来るのはさざ波の音と潮風に鳶の鳴き声、あとは季節によって鶯や蜩の歌声も聴ける。僕が田舎育ちだからかもしれないけれども、そういう音や匂いは平気というかむしろ落ち着く。まぁ烏の鳴き声とか、夏になれば蝉の鳴き声が凄かったりもするけれども、その辺は幼少期からの慣れで脳内キャンセリングされているので気にならない。

脳内キャンセリングといえば、湘南名物の珍走団は毎週末元気に爆走しているけれども、これも幼少期から慣れているので個人的にはそんなに気にならない。ただ、珍走団の出没する地域に住んだことがないとあの音は結構キツいかもしれないので、国道134号等の幹線道路の近くは気を付けた方が良いかもしれない。

買い物がそこそこ便利

買い物については、店の豊富さで言えば新宿とは比べるべくもない。とはいえ湘南最大の駅前商圏を誇る藤沢駅まで約4km、自転車で20分弱で行けるのは強い。ただ、この辺の感覚は都会にしか住んだこと無いと変わってくるかもしれない。僕の中では2km圏内は近所で、5km圏内は自転車ですぐに行ける距離なので…。

あとは、近所の地場スーパーで揃わない食材は自転車で10分走ればヤオコーの大型店があるし、最近になって自転車5分圏内に業務スーパーが開店して更に便利になった。こんな感じで、車が無くても自転車があれば買い物には全く困らないというのが半年ほど住んでみての印象だ。沿道も中道を選べば長閑な風景なので、気分転換のサイクリングだと思えば快適だ。

新宿まで一本で出られる

どうしても東京でないといけない用事というのは僕の場合は少ないけれども、いざとなれば片瀬江ノ島駅から新宿まで小田急線1本で行ける。土日や平日の朝夕は始発から終点まで通しで乗れて、1時間強で新宿に着いてしまう。また湘南モノレールで大船へ出れば、横浜や東京の東側へも出られるので、万一今後通勤の必要に迫られることがあったとしても問題無い。

鎌倉市街の方に住むと片瀬江ノ島駅という選択肢が無くなる分、腰越地域の方が交通の便は良いと言えるだろう。特に僕の住んでいる地域は江ノ電・湘南モノレール・小田急の3線利用可という、東京の不動産屋が推してくるような謎の便の良さがあるので、その点では田舎にあるまじき利便性を享受していると思う。

良くなかったこと

外食の選択肢が少ない

良くなかったことの筆頭は間違いなくコレ。特に新宿はアジア系の料理店のレベルがずば抜けて高かったのもあって、そこからの落差はかなりキツい。まぁ住んでいるのが日本人ばかりなので仕方ないのかもしれないけれども、変に日本人向けにアレンジされていることが多くて、良さそうな店を選んでも全然口に合わないことばかりなので厳しい。

あと、うどんの美味しい店も見つからない。東京だと頑張って探せば本当に美味しい讃岐うどんの店や味噌煮込みうどんの店にありつけていたのだけれども、やはりこちらは元来蕎麦文化圏。蕎麦のレベルは高いけれどもうどんは壊滅状態だ…。ついでに僕は石川にも住んでいたからチャンカレ、所謂チャンピオンカレーも好きなのだけれども、そういうご当地系も絶望的。やはり食に関しては東京が強い。まぁそれについては世界一かもしれないから仕方ないか…。

ちなみに、意外にもラーメンについては江の島界隈が結構激戦区な感じでレベルが高かったのが嬉しい誤算だ。あと、新鮮な地魚を安く食べられることについては申し分ないので、必ずしも悪いことばかりでもないということは付け足しておきたい。近所の魚市場で持ち帰りできる600円の地魚海鮮丼とか、あり得ないくらい安くて新鮮で美味しいからなぁ…。

ネットスーパーやUberEatsの充実度はイマイチ

近所にスーパーが2軒もあれば十分かもしれないが、新宿に住んでいた時は重い物や嵩張る物を中心に楽天西友ネットスーパーを使っていた。ただ、鎌倉市だと一部地域を除いて配達地域から外れてしまっている。他社を見ても鎌倉市については部分的な対応に留まっていることが多くて選択肢が少ない。

あと、UberEatsは最近になって鎌倉市でもサービス開始されたが、対応店舗が非常に少ない…。出てくる店はチェーン店ばかりだし、それも配達パートナーがいないと言われて注文できないことが多いので、結局移住してから一度も使っていない。今は近所の料理旅館が最低価格無しの出前をやっているので、専らそっちを利用している。

こういった人口が多いからこそ成り立つようなサービスについては、やはり東京が強いと痛感する。そこは人が少ないメリットを享受している以上はトレードオフということで甘受すべきなのだろう。

ただただ違いに驚くこと

治安が非常に良い

東京というのは色々な人のいる地域だ。特に僕が住んでいたのは歌舞伎町と道を隔てて向こうだったので、治安の良し悪しで言うとまぁどうしたって悪い方と言わざるを得ない。住んでいる間にも何度か近所で発砲事件やら殺人未遂事件やらあったし。

方や鎌倉市。別荘地としての知名度の高さから、その後も富裕層が多く住むようになったことで、経済的にも精神的にも余裕のある人の多いこと多いこと。それは交通マナーにもよく表れていて、横断歩道を渡ろうとした時に地元の車は大抵止まってくれる。いや、それが本来の交通ルールではあるのだけれども…。初心者マークの車が狭い道で離合に失敗してプチ渋滞を引き起こすような修羅場も何回も見たけれども、そういう時でもクラクションを鳴らす車を見たことが無い。

ただ何事も裏表はあるもので、人々に余裕があるせいなのか接客業が若干緩いというのは感じる。飲食店でしょっちゅう注文を間違えられたりとか、約束の時間をすっぽかされたりとか、そういったことは東京に住んでいた頃と比べて格段に増えた。東京でやらかすと誰かしらキレるようなことでも、こっちの人は怒らないことが多いので…。

外国人が少ない

新宿に住んでいた時は、コンビニの店員が日本人だとむしろレアイベントだった。こっちだとコンビニの店員といえば学生アルバイトだし、観光客以外で外国人を見掛けることがほぼ無い。その観光客もコロナ禍で激減しているので、何処へ行っても日本人だらけだ。いやまぁ、むしろ新宿が異様に外国人大杉な地域なのだとは思うけれども。

ある程度は外国人がいてくれないと現地感のある飲食店の需要も無くなってしまうので、もう少し増えてくれても良いかなとは思ったりもする。

FAQ

暫く実際に住んでみて色々わかってきたので、ありそうな疑問にも答えておく。

海沿いのデメリットは実際どうなの?

湿気・塩害・強風という海沿いのデメリット3点セット。まぁ実際あるっちゃある。ただ、どれも普通に生活する分には対策のしようがあることなので、それよりも海の近くに住むことを好きになれれば全く問題無いと思う。僕は潮風とか漁港の散歩とか鳶の鳴き声とかが好きなので、デメリットについては全然気にならない。

………いや、夏場の猛烈な湿気だけはちょっと閉口するかもしれない。スーパーから一歩出たら眼鏡は真っ白、買い物袋も水浸しになるからなぁ…。

家賃は変に高くないの?

これは場所による。鎌倉市の場合、鎌倉駅の半径1km圏内くらいにはとんでもないプレミアムが付いている。相場的には1Kで7.5万円前後と、横浜や武蔵小杉あたりとも勝負できるくらいだ。

一方で我らが腰越の相場は同じ1Kでも5.5万円前後と、2万円程安くなる。腰越は江ノ電沿線の家賃相場だと大体いつも最安を競っている感じだけれども、周辺地域と比較する限りではこれくらいが地の価格という感じがする。ちなみに大船はその丁度中間くらいなので、多少の利便性に目を瞑れるのであれば、市西部の沿岸地域の方が安い家賃で海チカに住めるということになる。

車や自転車の必要性は?

車については、丘の上のセレブタウンにでも住まない限りは必要無いだろう。ただ、自転車は大船駅付近に住むのでない限りは必須と思っておいた方が良い。

鎌倉市はこの規模の自治体としては公共交通機関が非常に発達していて、江ノ電や湘南モノレールが高頻度運転をしていたり、オムニバスタウンに指定されていることでバスも充実している。ただ、江ノ電は観光シーズンになるとすし詰め状態になるし、バスは市内の主だった道が渋滞するせいで下手をすると自転車よりも遅かったりする。とはいえ徒歩圏内で生活を完結するのは難しいので、必然的に自転車もしくは原付・二輪が不可欠な存在となってくる。

ちなみに、鎌倉市内は東京と比べても起伏の差が激しいので、運動と割り切れるのであれば良いが電動アシストはあるに越したことは無いだろう。

横須賀線は列車が15両編成でやって来るのに田舎?

それを言ってしまうと、滋賀県の米原駅は新幹線と12両の新快速が止まる一大ターミナルだけれども、駅から一面の田園地帯まで徒歩分なので…。

というのはさておき、鎌倉市は大船地域を除けば夜がとても早い。コロナ禍とか関係なく17時になれば個人店はシャッターを閉め始め、飲食店も20時には閉まっていく。そういう部分を見ると鎌倉市は郊外都市というよりは田舎の地方都市と言った方が個人的にはしっくり来る。

おわりに

半年もすると移住した当初の非日常感は薄れて、もう少し辛口の所感になるかと思っていた。しかし実際はやっぱりこっちに住んでとても良かったと思えているので、こちらの環境の良さは勿論だけれども、僕が心底都会に馴染めないタチだったというのもあるのだろうなと感じている。

一番そう思うのは帰宅する時の感覚で、東京に住んでいる時はずっと旅先のホテルに戻るような感じだった。それが移住して半年、いや1ヶ月もした頃には家に帰ってきたという感覚になれたので、やっぱり僕にとっては都会=行く場所、田舎=帰る場所なのだと思う。

前に住んでいたのが新宿のド真ん中だったので、それが東京の郊外であればまた少し感想は違ったかもしれない。ただ、今後そういう郊外都市に住みたいかというと、リモートワークできる限りはまず無いと思う。むしろあわよくばもっと田舎に住んでみたいという思いまである。まぁ、まだ移住して半年なので当面は鎌倉市での生活を堪能するけれども。

最後に、最近撮った早朝の江ノ電と相模湾の写真を載せておく。やっぱり個人的にはこんな風景を眺めつつ鎌倉の社寺を巡れるのが一番楽しい。