僕は今の会社でテックリードという肩書きで仕事をしている。ただ、テックリードと言ってもその内実は会社によって、人によっても千差万別である。そんな混沌としたITエンジニア界隈において、今後のキャリアの指標とすべく読んでみたのが「スタッフエンジニアの道」だった。
想定される読者層
本書を手に取るべき読者層として個人的に想定されるのは、中堅やシニアといわれるようなエンジニアで、かつマネージャーではなく技術者としてキャリアを積んでいきたいと考えている人達だ。
スタッフエンジニアと一緒に仕事をする人達が、彼らを理解するために読むのもアリと言えばアリなのだが、本書は僕のような本職のエンジニアが読んでも結構抽象度の高い話が出てくるなぁという印象が強いので、そういう人達はある程度覚悟して読んだ方が良いと思う。
良かった所
実は、僕は本書を読む前に「スタッフエンジニア」というその名の通りの書籍を手に取ったことがあったのだが、その時はスタッフエンジニアがどういうものなのか今ひとつピンと来なかった。だが、本書については自分が今までに取り組んだことのある事柄からその延長まで具体的に書かれていることも多く、今の会社で課題となっていることに対してのアドバイスになるような話もあったりした。
中でも第II部「実行」は、プロジェクトにおけるスタッフエンジニアの立ち振る舞いについて事細かに書かれており、学びが多かった。あとは人生という観点からエンジニアとして何を大事にするかについて書かれた部分もあったりして、必ずしもマッチョでイケイケなエンジニアになるだけが正解というわけではないことも教えてくれて少し安心した。
苦しかった所
一方で、読んでいて苦しくなるというか、心がヒリつく場面も多々あったのも事実だ。僕はエンジニアにありがちな典型的コミュ障なのだけれども、本書において多くを占めるのがコミュニケーションの話だ。周囲のエンジニアの規範となったり、良い影響力を広げていくという過程においては、コミュニケーションは欠かせないのである。
カンファレンスで登壇するとか、社外へ出て行くのも内向的なエンジニアにはきっつい話だと思う。とはいえスタッフプラスともなれば内外である程度名が知られているというのもそりゃ必要だわなと思ったり、思わなかったり。
難しかった所
読んでいてなかなかピンと来ないこともあった。特に第I部の「大局的な思考」は、ここが抽象的な話が多い箇所なので読むのを止めてしまうのはありそうだけれども、それは勿体ないなと後から思った所だ。逆に言えば、ここを乗り越えれば後は我々のようなエンジニアからすると理解しやすい話が多くなってくるので、踏ん張り所である。
5章「大規模プロジェクトをリードする」については、僕が小さめベンチャーばかりを点々としているために若干の縁遠さを感じた部分だ。ただ、こちらは普段自分が関わっているプロジェクトの延長線上の話だし、いずれ自分も大規模プロジェクトに携わる日が来るかもしれないと思いつつ、気合いで読んだ。
結局、スタッフエンジニアとは何なのか
さて、本書を読み終えても、具体的にこれがスタッフエンジニアだという風に説明するのは正直難しい。
強いて言うならば、スタッフエンジニアというのは、組織を俯瞰しながら抽象度の高い課題解決に責任を持って立ち向かえる人だという一面はあるだろうか。一方で、一緒に本を読み進めていた社のマネージャーからは、スタッフエンジニアとマネージャーの違いは部下に責任を持つかどうかでしかないという意見を得られた。確かに、その分スタッフエンジニアは技術面で責任を持つということになるのかもしれない。
そう考えると、スタッフエンジニアにコミュニケーションが求められるのも当然といえば当然というわけで、苦手だけどやっていくしかないかという気持ちにさせられる。
おわりに
本書は正直抽象度の高い話が多くて読みやすいとは言い難いけれども、そもそもエンジニアという仕事も上位になればなる程抽象度の高い課題解決が求められるわけで、この内容を自分の糧にしてキャリアアップしていくのがスタッフエンジニアの道なのだと思うことにしたい。いやー、道のりは険しそうだ。