以前にMacからWindowsへの移行を検討した時には、以下の記事の通り終盤で挫折してしまったけれども、この度めでたく完全移行したので良かったこと・厳しいこと等を交えつつ所感を綴っていこうと思う。
所感
Windowsを15年使ってからの8年Macに浮気してからのWindowsへの出戻りとなったけれども、結論から言えば移行後のWindows環境にはとても満足している。
僕はOSをゴリゴリにカスタマイズして使うタイプの(Win9x時代はLiteStepとか98liteとかに手を出していたような)人間なので、最初の1週間くらいは微妙なキーバインドの違いやソフトウェアの使い勝手の差で悶絶しただろうか。ただ、先の記事にも書いたような事前準備を綿密にしてあったので、2週間も経つ頃には違和感無く使えるレベルになっていた。Windowsは僕が離れた頃の7から8、8.1を経て10まで来ているけれども、基本的な所は20年前のWindows 2000から良くも悪くも大きく変わっていない。なので、コントロールパネルだのレジストリだのrundll32.exeだのという懐かしい響きを噛み締めながら、何で設定とコンパネがいつまでも併存しているんだよとツッコミを入れつつ、やっぱりWindowsなんだなということを再確認している。
検討時に挫折した原因であるトラックパッドとフォントレンダリングについても解決した。トラックパッドについては、どうしてもMagic Trackpadに引けを取らない使い勝手が欲しかったのだけれども、Windows用のトラックパッドでは3本指ドラッグがどうやっても無理で、あとトラックパッド表面の処理もザラついたものばかりで納得できなかった。ところが、なんとMagic Trackpad自体をWindowsで快適に使うためのMagic Utilitiesというツールがあることを知って、これでほぼ同じ使い勝手を再現することに成功した。慣性やスクロール量等で微妙にしっくり来ない部分はありつつも、慣れでカバーできるレベルにはなったと思う。
フォントレンダリングについては参考事例としては微妙だけれども、ディスプレイを27型から43型に替えたことで問題が解消した。43型というと大体21型のFHDディスプレイを4枚並べたくらいの大きさかつ解像度なので、所謂非Retinaであり、Windowsだとスケーリング100%で使えてしまうのだ。それでどうなるかというと、OS標準の游ゴシックがそこそこクッキリと表示されるのである。Windowsというのは良くも悪くもスケーリング100%でのフォントレンダリングがクッキリしていて、それがMacやLinuxに慣れた人達から汚いとディスられる原因になっていたのだけれども、個人的にはMSゴシックのようなビットマップフォントはともかく、ヒラギノや游ゴシックがClearTypeでレンダリングされる分にはむしろ見易くて良いと思っている。これがスケーリング150%とかになると逆に細くて辛いということになるので、まぁあまり褒められたものではないけれども、自分の環境では快適になったので良しとする。
Windowsに移行して良かった所として、筆頭に挙げるとすればDockerのパフォーマンスだろうか。Macだとどう調整してもI/Oがネックになってしまい、Railsアプリケーションの開発時にIntelliJの鈍重さと相まって多大なストレスを強いられていたのだけれども、これがWindowsになると同じMacBook Proでも体感で倍以上の速度改善を実感できる。まぁ僕の場合は4KでIntelliJを使っていて常にCPU使用率が200%とかになっていたのも良くなかったのだろうけれども。完全移行した先のPCはRyzen 9なので、どんなに高負荷の処理をさせても重いと感じたことは一度も無い。IntelliJもWindowsであればCPU負荷の問題が発生しないので、普通のエディターと同じくらいサクサクに動いてくれる。
Linuxとの親和性についてもかなり良くなっている。WSL2についてはまだまだ発展途上ではあるけれども、Bash on Windowsと呼ばれていた頃と比べれば格段に進化していて、もはやCygwinやMinGWのような互換レイヤーやPuTTYやTera Termのようなターミナルは全く不要になった。Windowsのビルド番号が変わる度に様々な問題を引き起こしてくれることに目を瞑れば、自分がWindowsを使っていることを忘れさせてくれる。将来のバージョンではLinuxのGUIアプリケーションまでサポートされる予定なので、ソースコードもIDEもDocker開発環境も全部WSL2で完結して更に便利になることが見込まれる。
あと、Windows TerminalやPowerToysのような開発者好みするツールが積極的に拡充されていることも最近のWindowsの良い所だと思っている。特にPowerToysはテキストランチャーやキーバインドツールといった、AlfredやKarabinerのようなMacの必携ツールに相当するものをMS自ら開発しているので、今はまだまだベータ版以前という感じではあるけれども今後が期待できる。
厳しいことを挙げるとすれば、強いて言うなら情報の質だろうか。WindowsはMacと比べるとデフォルトのUIが洗練されていないので、カスタマイズに関する知見を「裏技」などと謳って紹介する記事が目立つのだけれども、これが結構酷かったりする。一度著名なサイトで間違った情報が公開されたりした日には、それをパクった記事が雨後の筍のように量産されて、間違いを正す記事が出ても数の暴力に埋もれてしまう。昔もこうした情報は玉石混淆だったので気を付けていたけれども、ここ暫くはITリテラシーの高いユーザーがMacやLinuxに流れていたせいか余計に酷くなっている気がする。
移行を人に薦められるか
今、Windowsへの移行を人に薦められるかと言われると、PCを弄るのが好きな人には薦められるという感じの回答になる。
Windowsというのはデフォルトの使い勝手がどうにも良くなくて、それを自分好みに弄り倒してなんぼだと思っている。一方のMacは確かに洗練されているけれども、自由度の高さでいうとWindowsには及ばなくて、ゴリゴリにカスタマイズしたWindowsはMacよりも使い易いというのが僕の個人的な感触だ。人間に機械を合わせるか、機械に人間を合わせるかはどちらが良いとも悪いとも言えないけれども、そういうOS毎の思想の違いみたいなものは実際に使い込んでみて初めて実感できるものなので、昨今のニュースで興味を惹かれる部分があるのならば試してみると良いと思う。
MacはApple Siliconへの移行で一波乱あるだろうというのは、当然僕も思うところではある。ただそれについては、Windowsの方もMS自身がSurfaceでArm化の道を探っている様子なので、PCやIAサーバー業界全体として今後のCPUアーキテクチャーの覇権が流動的になるのだろうと考えている。それよりも気になるのはPC向けOSへの力の入れ方の所で、そこについては今だけを見るとAppleは硬直していて、一方のMSはバルマー時代が嘘のような躍進を見せている。ライバルがいないと健全な競争は生まれないので、WindowsもMacもLinuxもそれぞれ良い所を磨いてほしいのだけれども、最近はちょっとMacを心配するまである。まぁiOS開発の縛りがあるので2010年代のWindowsからMacへの盤面返しみたいなことは流石に起こらないとは思うけれども。
おわりに
数日前、折しも同時期にWindowsへ移行したr7kamura氏がMacネイティブなのに対して、僕はDOS/Windowsネイティブで、歳も僕の方が行っているので見えている景色は結構違うのだろうけれども、「新しいものは面白いよね」という感覚についてはIT技術者たるもの共通して持っている気質だろうと思う。
加えて僕の場合は幼少期からMSのOSをずっと使っていたので、英語を使っていた日々から母国語に戻ってきた感もある。海外に住んだこと無いし英語できないけど。ただ感覚として、Macはゴム手袋で触る感覚、Windowsは素手の感覚みたいなものはある。まぁそれで言うならば僕にとってのネイティブはPC-98のDOSでありWindowsであるのだけれども、それはまた別の話。
Windows、Macと来てLinuxというのも考えないでは無かったけれども、これについてはPhotoshopとIllustratorを多少は使う人間なのでGIMPやInkscapeは勘弁願いたいとか、Windowsでゲームをちょっと動かしたいとか、そういうソフトウェア的な事情が大きい。おっさんPCユーザーにありがちな過去の資産みたいなのは、僕はバッサバッサ捨てていく方なので気にしていないけれども。
そんなこんなで、久々にWindowsに戻ってきて楽しいので、暫くは余暇をOSのカスタマイズに注ぎ込んでいくことになりそうだ。Flutterやろうとかスマートホームに手を出そうとか画策していたけれども、当面は新しいオモチャに夢中になりそうな予感がしている…。
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