35歳からの中二病エンジニア

社寺・鉄道・アニメを愛でるウェブ技術者の呟き

挨拶の苦手な人間にエンジニアの資格は無いのか

ASD持ちのウェブエンジニアとして気になるツイートを見掛けたので、少し触れたいと思う。

反響が大きかったので補足

  • 一番言いたいのは、「そういう特性の人もいるよ、互いの個性を尊重し合って適材適所が良いよね」という話。
  • 苦手な人が表面上のコミュ力を身に付けること自体は無理の無い範囲でやっておくと可能性が広がることは間違いない。
  • ツイート主の素性は確認すべきだったと反省している。

あと、前向きになるために次の記事を書いた。

aikawame.hateblo.jp

以下、本文。

挨拶はできて当然のことか

僕も職場では毎日挨拶している。ただ、これは自然にできるようになったわけではない。小学生の頃までは親戚の大人と対面しても、怖くて親の陰に隠れているような子供だった。ピアノの個人レッスンも受けていたけれども、入室時と退室時にお辞儀するだけ、レッスン中も頷くだけで、一言も声を発せないような子供だった。数少ない友達と遊ぶ時でも、家のインターホンを押すのさえ嫌だった。

それでも、何とか社会人になるまでに猫を被る技を身に付けて、最低限の対人コミュニケーションを「表面上は」できるまでになった。その後仕事の技量を認められて、リードエンジニア業を任されたり、客先との調整役やインターンのメンターのような経験を積めたのは僥倖だ。

ただ、訓練に訓練を積み重ねたことで、挨拶くらいは無意識にでもできるようになったけれども、未だにトイレで隣になった人と世間話みたいなシーンですら強烈なストレスが掛かるし、生産性は落ちる。ASD持ちにとっては、相手の反応というのは発される言葉しかほとんど頼りにならないので、定型発達者が顔色や声色等を伺うのに比べ、何を話すべきか考える部分に大きな負荷が掛かるのだ。

僕は幸いにして、脳が疲弊するだけで「表面上は」それなりのコミュニケーションを取れるようになったけれども、ASDの程度によってはそれが困難な場合も多いし、僕自身も精神を患ったこともあり、今はバリバリコミュニケーションが発生する所から一歩引いている。定型発達者からすれば物心ついた頃から当たり前にできていることが、当たり前にできない人も居るということについては、声を上げておきたい。

エンジニアにはASDやグレーゾーンが多い

エンジニアのような論理的思考を求められる職業には、ASDやグレーゾーンと呼ばれる定型発達者との狭間の人達が多い。各種専門書にも記載があるので詳しくは述べないが、ASD持ちは大雑把に言えば論理的思考が得意で、そこがエンジニアという職種に向く傾向にある。一方で、他人への関心が薄かったり、相手の表情や声色から感情を認識するのが苦手であったりと、対人コミュニケーションに大きなハンデを追う傾向にある。

一部のエンジニアが挨拶や日常会話に難があるというのは、今までの経験上も事実だとは思う。ただ、彼らの多くは決して面倒とか悪意をもってとか、そんな理由でコミュニケーションを忌避するのではない。やりたくてもうまくできなかったり、意義を見出せていなかったり、極端なストレスが掛かったりするのだ。一方で、対人コミュニケーション能力を犠牲にして、彼らはその技術力を獲得しているという側面もあるわけで、だからお目こぼししろと言うわけではないが、彼らには彼らなりの事情があるという所については、頭の片隅に置いておくと良いのではないかと思う。

おわりに

とはいえ、同じ成果を出すエンジニアであればコミュニケーション能力の高い方が良いとか、そういう話はまぁあるだろうとは思う。そこを適材適所として、苦手なコミュニケーション能力をそこまで問わずに済む形で仕事を任せるか、一律に最低限のコミュニケーションを強制するかは各社の考え次第だろう。

ただ、少なくとも僕自身は、今まで見てきたコミュニケーション能力に難のあるエンジニアの中に、優秀な人達を多数見てきたので、挨拶を強制する会社で働きたいかと言われるとノーである。これは職種を変えれば、営業にプログラミングの基礎知識を強制するようなものだと思っている。もちろんできればより強力だとは思うけれども、苦手なら苦手なりに適材適所だと思う。そして、部署間で互いの強みを尊敬し合うのが一つの全体最適の形だと考えている。

願わくは、挨拶や対人コミュニケーションが苦手であってもエンジニアが輝けるような職場が増えてくることを祈るばかりだ。