35歳からの中二病エンジニア

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無償版G Suiteの終了に納得できない件

無償版G Suiteが今年の7月1日で完全終了するのは既報の通り。

support.google.com

これについて、「月に680円程度でガタガタ言うな」的な言説も各所で見られたけれども、ちょっと納得が行かない部分があるので書いておこうと思う。

TL;DR

  • 無償版G Suiteは個人が独自ドメインGmailを使いたいという理由での利用がある。
  • 元々個人向けアカウントでは独自ドメインを使えなかったが、今では使える。
  • G Suiteから個人向けアカウントへの移行ができれば事足りるが、不可能。
  • 今では個人向けアカウントで事足りるのに、有償契約必須なのは納得しかねる。
  • 月680円でも、10年で8万円だと大型家電を1台増やすことに匹敵する。

そもそも無償版G Suiteとは

無償版G Suiteとは、2006年にGoogle Apps for Your Domainとして始まったサービスで、Googleアカウントをグループ管理し、独自ドメインも使えるようなものだった。当初は無償で利用できたために僕のように個人で独自ドメインを取得し、GmailGoogleのサービスを独自ドメインで運用するという使い方も割と多く見られた。

ところが、2012年には無償版の新規登録受付が終わり、その後同サービスは有償での提供のみとなった。G Suiteに改称されたり、有償版だけが再改称されてGoogle Workspaceという名前になったりとコロコロ変わる中でも、無償版G Suiteはそのまま提供され続けた。そんな中、我々無償版の個人ユーザーはいつGoogle先生から梯子を外されるか怯えつつも騙し騙し使っていたわけだが、ここに来て遂に完全終了となったというわけだ。

そういう意味では、個人的には無償版の完全終了についてはGoogleにこれまでの無償提供に感謝こそすれ、文句を言うつもりは全くない。後述の問題さえなければ……。

元々個人向けアカウントでは独自ドメインを使えなかった

Google Apps for Your Domainが登場した当時は、まだ個人向けアカウントではGmailアドレスしか使えなかった。今なら個人向けアカウントにも独自ドメインのメールアドレスを紐付けられるので、個人利用する分にはそれで問題ないだろうが、そういう選択肢がなかったのだ。

この点は重要で、当時から個人向けアカウントで独自ドメインを利用できたのであれば、そこで敢えてグループ向けのサービスを選択したのだから自業自得だという面は否めないと思う。ただ、当時は選択肢がなかった以上、個人が独自ドメインを使うためにGoogle Apps for Your Domainを利用したのは必然ではないかと思う。

アカウントの移行が一方通行

もう一つ、個人向けアカウントからWorkspaceアカウントへは移行できるが、逆はできないという点である。

無償版G SuiteアカウントやWorkspaceアカウントから個人向けアカウントへの移行ができるのであれば、僕のような個人でしか使っていないユーザーには、個人向けアカウントを使うという選択肢が残される。しかしこれができないとなると、残された道は有償のWorkspaceを契約するか、個人向けアカウントを新規作成して可能な限りのデータを手作業で移行するかの二択となる。

前者については、今となっては個人向けアカウントで事足りるのに必要ない機能に対して有償契約するのは納得できない。では後者はどうかというと、例えばGoogle Playの購入コンテンツであったりとか、Googleマップのバッジであったりとか、こうしたインポートできないデータはどう頑張っても移行は不可能だ。つまり、無償版G Suiteユーザーに残された道は、事実上有償版の契約しか残されていないのである。たとえ利用したい機能が個人向けアカウントで賄える範囲だったとしても。

月680円は安いのか

冒頭の「月に680円程度でガタガタ言うな」的な言説も疑問に思う。

確かに月で考えればランチ一食分程度かもしれない。しかし、Googleアカウントなんてものは今後生涯使うものだ。そうなってくると、例えば10年で約8万円と考えれば、冷蔵庫や洗濯機のような大型家電を1台増やすことに等しいのではないか。僕も10年で8万円の出費を「その程度」と切り捨てられるくらいにお金が有り余っていれば良かったのだけれども、生憎そこまでの富裕層ではないし、お金に余裕があったとしてもこのコスト感と内容だと中々看過できない。

おわりに

無償版G Suiteのユーザーの中でも使い方はそれぞれだと思う。グループや、個人でも複数アカウントを駆使しているのであれば、それはWorkspace特有の機能を享受しているので、有償版の契約となっても納得の余地はあるだろう。また、Gmailやカレンダー等の移行が容易な範囲で個人利用しているユーザーも、個人向けアカウントにせっせこ移行するという現実的な選択肢があると思う。

ただ、僕のように独自ドメインを使いたいためだけに無償版G Suiteを使っていたユーザーとしては、今の個人向けアカウントであれば必要十分なのにそこには移行できず、不要な機能に対して有償契約を求められているということで、どうにも納得いかないのである。これは界隈でよくあるような「無償にしてユーザーを集めておいて、覇権を取ったら搾り取る」といった単純な問題ではないと考えている。

願わくはGoogle先生がG SuiteやWorkspaceのアカウントから個人向けアカウントへの移行をサポートしてくれることを希望したいものだが、果たして今のGoogle先生にそれを望めるだろうか…。ひとまずまだ半年弱あるので、暫くは様子を見てみようと思っている。

蛇足

本件についてGoogleに問い合わせようと思ったが、「Google Workspace サポートへのお問い合わせ」の案内通りにAIチャットを呼び出し「サポートに問い合わせる」を選ぶも、何をやっても堂々巡りで最初の質問に戻るという状態だったので、ここに追記しておく。