35歳からの中二病エンジニア

社寺・鉄道・アニメを愛でるウェブ技術者の呟き

天下一品創業50周年によせて

2021年11月、京都北白川に総本店を構える中華そばの全国チェーン、天下一品(通称天一)は創業50周年を迎える。

僕が天一に出会ったのは奇しくも創業30周年である2001年なので、天一の歴史の4割をこの目で見てきたことになる。とはいえ僕は全店制覇するようなこってりフリークではないので、あくまで一般的な常飲者としての天一への思いを、明日10月1日から始まる天下一品祭りや50周年を迎えるその日に先立って綴っていこうと思う。

三度目までは我慢せよ

僕の天一に対する最初の感想は、「こんなマズいラーメン二度と食べたくない!」だった(失礼)。これは、天一が好きな人からも苦手な人からも稀によく聞く話である。

僕の場合、大学時代の部活の先輩達に半強制的に連れて行かれていたので、拒否権が無かったというのが運命の分かれ道だった。独りで入店していたとしたら、本当に二度と食べようとはしなかっただろう。しかし先輩達が僕を拉致するものだからどうしようもない。二度三度と連れて行かれ、あっさりを頼むわけにもいかず、仕方なく覚悟を決めてこってりを食す。

ところが不思議なもので、二度目には「あれ?いけるかも…」そして三度目には「え!?むっちゃ美味いやん!!」へと変わっていったのである…。

今にして思えばこの反応は、天一が既存のラーメンという料理から余りにもかけ離れているため、「ラーメンだと思って食べたのになんか違う」というミスマッチによって生じるものなのではないかと思っている。実際に統計を取ったわけではないけれども、天一好きほどこの「最初はマズいと思った」的なエピソードを語ってくれることが多いし、逆にそれほどという人は当初から特段の好悪を抱かなかったという場合が多い。

つまり、天一に対して少し食べてみて嫌悪感を持っている人達は、むしろ潜在的なこってりフリークなのではないかと僕は思っている。それだけ天一へのインパクトが大きかったわけだから、脳内で天一を「これはラーメンとは違う、天一という食べ物なのだ!」と変換できればハマる可能性を秘めているのだ…!知らんけど。

店舗による味の差

段々と天一にハマり始めた頃、丁度僕は短期間に引っ越しを繰り返していて、結果的に各地の天一を楽しむ恩恵を受けていた。そうすると店舗によって微妙に味が違うことに気付くようになってくる。

特に滋賀県大津市に住んでいた頃は、自宅周辺だけでも石山店(閉店)、御殿浜店、草津店の3店舗が林立していて、草津店はFC店でその他は直営という違いもあったりと、非常に恵まれた環境だったと思う。当時の個人的な印象としては、直営店はどこも大体リファレンス的な安定感のあるこってりを出してくれる一方で、FC店はラーメンタレが多めでスープが若干薄めの店が多かったり麺のクタクタ具合が微妙だったりと、質がまちまちだったように思う。

余談だが、天一の麺というのは一般的なラーメンと比べると若干クタクタなのがデフォルトである。決して茹ですぎなのではなく、これが濃厚スープと相性抜群なのだ。

本店への道

さて、店舗によって味が違うとなれば、当然気になるのが本店の味である。

僕はそういう意味では本当にラッキーだったと思う。天一に本格的にハマり始めた時期、本店にそこそこ近い大津市に住んでいて、しかも20代の胃腸が元気な体だった。そう、正に天の時・地の利・人の和を全て満たしていたのだ…!というわけで、満を持しての本店である。

もうね、震えましたね。もはや他の天一各店舗と比べても別の麺類ですね。

今まで食べてきた天一は、タレの多い少ないとかスープの濃い薄いとか、そういう違いはあったけれども、ベースとなる味はあくまで一緒だったように思う。ただ、本店だけは全く違うと一口すすった時点で感じ取れた。それくらい本店の味は異質だった。

言葉にすると難しいが、本店のスープはとにかくギットギトのドッロドロだ。ただ、塩気が少ないので全然クドいとは思わない。ラーメンタレ多めのFC店だと塩辛くてスープを完飲できない場合があるけれども、本店の場合は油っこさでノックアウトされる感じだろうか。

そう、変な話ではあるけれども、本店以外の天一というのは「こってり」という名前でありながら、わりとまろやかなのだ。一方で、本店のこってりは紛うことなき「こってり」であって、20代の健康な胃腸でもスープライスセットを完食すればドスッとした感覚がやって来る。そして「あぁ、もう当分こってりは要らんな…」と満足するのだ。

…そして、そう思った1週間後には懲りずにまた本店へ行くのが清く正しいコッテリストである。結局僕は、その後東京へ引っ越すまでの約1年ほど、毎週本店へ通ったのであった…。

東京の天一

本店との別れは唐突にやって来た。仕事の都合で東京へ引っ越すことになったのだ。

実は僕にとっては二度目の東京住まいだったのだけれども、一度目はまだ天一にハマる前だったので、時々吉祥寺店に寄るくらいだった。しかし今度は本店の味を知ってしまった後なので、本店ロスを少しでも埋めようと東京の天一事情をリサーチした。

ふむふむ、東京近郊だと水道橋西口店(現水道橋店)、神田店、高田馬場店(閉店)あたりが高評価か。あとは直営の高円寺店、神楽坂店は安定の味と。

結果的に、僕の本店ロスを埋めてくれたのは水道橋西口店だった。この店舗は本店の味にあと一歩及ばないながら、他店とは明らかに違うギトギト・ドロドロ感が出ていて「ジェネリック本店」と言っても差し支え無い味だと感じられた。あと、店内のレイアウトが本店の鏡映しに近かったのも、本店の雰囲気を感じさせてくれて良かった。

その後、都合東京には10年近く住むことになったので、そこそこ多くの店舗を巡ることになった。お気に入りは、水道橋西口店と同系列とされる赤坂店と、自宅近くでかつ美味しかった高田馬場駅だったのだけれども、こちらは残念ながら閉店してしまった…。

あわや天一難民

昨年2020年に鎌倉市へ引っ越した。鎌倉市には大船店があるので、辛うじて天一難民になることは免れたけれども、もし大船店が無ければ横浜まで出なければならない。それどころか、天一が存在しないとか、存在しても1店舗だけみたいな県もある。

今は「家麺」という自宅で天一を作れるセットを通販で買うこともできるけれども、コロナ禍で何度かお世話になっているがやはりお店の味とは少し違う。いや、この手のセットとしては再現度はハンパなくて、何ならドロドロ具合とかは自分で最強にまで調整できたりと自由度は高いわけなのだが…。何というか、少しだけパンチが足りないのである。多分、普段天一を食べない人が口にしたら全くわからないレベルだとは思うけれども、常飲者からすると何か違うというくらいの差だ。

というわけで、引っ越す時には最寄りの天一を確認することは我々には重要な要素だということを痛感させられた。

こってり以外の味について

天一について触れる時に、避けて通れないのが「こってり以外は実際どうなのか」という点である。

まず、あっさりについて。これはハッキリ言うけれども、こってりが苦手な人を連れて天一へ行くときの緊急避難用メニューだ(※個人の感想です)。僕は一度だけ、二度目か三度目あたりに天一へ強制連行された時、どうしてもこってりが嫌だったのであっさりを選んだ覚えがある。感想としては、普通のラーメンだった。こってりの圧倒的インパクトに対して、普通すぎるので敢えて天一である必要がない…というのがきちんとした感想だろうか。

一方で、味がさねについては僕はわりと肯定派だったりする。「天一を食べたい」という時に選ぶかと言われたら微妙だけれども、あれはあれで唯一無二の中華そばだったと思う。どうしても天一へ行くとこってりを求めてしまう性が発動するので注文回数こそ少なかったけれども、揚げネギを大量投入して食べるのが好きだった。復活に期待したい。

そして、事実上の味がさね後継である味噌ラーメン。これは僕は1回食べて満足してしまった。決して悪くはないのだけれども、僕の舌には味が濃すぎた。あと、味がさねほど独自性を感じられないというのもある。

最後に屋台の味。2号ともこっさりとも言われるこの味は…、実はまだ注文したことが無い。これを注文するのは、こってりが食べたいけれども胃腸の調子的に厳しそうな時だと思っているのだけれども、今の所はそういう事態に遭遇したことが無い。今後年を重ねることで、注文する日が来るのだろうかと少しドキドキしているアラフォーである。

印象的な天一

さて、ここからは今までに食べてきた中で印象的だった天一の店舗について触れていこうと思う。

中央通り店(宮城県仙台市

仙台市内の天一では、本店でも出てこないような超こってりの天一が食べられるというのは、常飲者の間では有名な話だ。

というのも、仙台市内の天一を経営するこむらさきグループの店舗では、「土鍋チーズ」という独自メニューを用意しているのである。このメニュー、文字通り天一のこってりが土鍋にチーズを乗せた状態で出てきて、スープはグツグツに煮えたぎっている。土鍋でしっかり煮立ててあるのも手伝ってスープは非常に濃厚で、常飲者にとっては垂涎物のメニューなのである。ただし、舌の火傷にはくれぐれも注意しよう。

ちなみに、僕は仙台旅行の時にこの土鍋チーズの虜になって、その翌年に東京から仙台へ、土鍋チーズを食べるためだけに日帰りしたことがある。お土産に萩の月は買ったけど。

上前津店(愛知県名古屋市・閉店)

2010年前後だったと思うが、大須の電気街を訪れたときに立ち寄ったお店だ。この店舗では何故かこってりのことを「スタミナ」と呼んでいるのが非常に印象的だった。そして出てきたのが、天一とは思えないようなサラッサラのスープ。間違いなく、今まで僕が食べてきた中で一番のサラサラ具合だ。そして、天一とは思えない塩辛さと妙なスパイシーさ。その理由は「明日もお待ちしてます」の先に隠れていた。丼の底に沈殿していたのは、大量の塩胡椒。これは流石に本部に連絡したら指導入るレベルだろう…と思ったけれども、結局閉店してしまったので然もありなんという感じだった。

あまり天一について良くないことは書きたくないが、まぁ閉店済の店舗というのと、余りにもインパクトが大きかったということで。

イオンモール草津店(滋賀県草津市

2008年当時、フードコートに入った天一というのはまだ珍しかったのではないかと思う。もしかして初か…?ということで、物珍しさに行ってみた。

天一をお盆に乗せてフードコートを歩くというのは、なかなか新鮮な体験ではあったけれども、それ以外はごく普通の天一だった。関西以外でやると匂いに対する苦情とか来そうだけれども、近畿圏であれば天一国民食みたいなものなので問題ない(※個人の感想です)。

今までに入店した天一

おわりに

天下一品創業50周年によせて、ヨイショするわけでもなく貶すわけでもなく、一介の天一好きとしてありのままの気持ちを文章にしてみた。こうやって書き綴ってみると、僕は思った以上に天一のお世話になっていると思う。長らく東京に住んでいると、天一よりも洗練された鶏白湯ラーメンに舌鼓を打つこともあって、思わず浮気しそうになってもおかしくないのだけれども、何故かいつもあのギトギトでジャンキーな飲食物に戻ってきてしまう。天一には、お上品な鶏白湯ラーメンには無い力強いパンチがあって、それが絶妙に僕らを虜にするのである。

四十路を目前に控えて、この先も本店のこってりを完飲できるかどうか心配になってくるお年頃ではあるけれども、これからも胃腸が許す限り、天一のこってりを愛飲していきたいと思う。みんなも最近リリースされた公式アプリをダウンロードして、遠方であれば家麺を注文して、天下一品祭りと50周年記念日を迎えよう。コロナ禍で10月1日の無料券配布は行われないけれども、各々のタイミングで祭りを楽しみたいものだ。

明日も食べに行きます。